「ねえ、あの二人?」
「そうそう、あの二人あの二人。」
都内にあるレストラン、あるテーブルでは合コンが行われていた。
「それじゃ、定番王様ゲ〜ム〜!」
それなりに盛り上がってるようだったがその中に2人、おとなしめの2人がいた。
「見事に盛り上がってないねー。」
「まあ……もともと合コン苦手なようだしね。」
そうこうするうちに王様ゲームは進んでいた。
「よーし、王さまだーれだ!」
「あ、俺だー♪」
「えー加茂くんなのー?で、命令何ー?」
「じゃあー……4番が1番にキスー♪」
加茂は完全に酔っ払っているようである。
「あ!」
「チャンス到来!」
この合コングループから少し離れたところに一組の男女がいた。その二人は先ほどからこの合コングループを観察し、小声で話し合っていた。
「ねえ、1番と4番って……。」
「そう、今回のターゲットだよ、トリン。」
トリンと呼ばれた女性は少し興奮しだした。
「ねえねえクラン、これもあなたの力?」
「正解♪」
クランと呼ばれた男性は得意げである。
「ねえねえ、くっつくかな、あの二人?」
「そりゃくっつくだろ、何てったって俺達は天使なんだから。」
クランが言ったようにこの二人は天使である。しかも、
「そうよね、私達は『愛の天使』なんだから。」
……周りの人間が聞いたら完全に引くようなセリフである。
「あ、そんなことよりあの二人、あの二人。」
二人は再び合コンのテーブルの方を向いた。
「あ……あれ?」
二人が向いた時にはすでに誰も居なかった。
「うそ……なんで?」
「俺らが喋り過ぎてたんだろうな、行くぞ!」
そう言うと慌てて外に出ようとした……が、支払いに足止めをくらってしまっていた。
「あ、いたいた。」
ターゲットの二人はいつのまにか二人っきりになっていた。
「……曽根さん……。」
「何でしょうか?大松さん?」
「その……僕は……その……。」
二人はどうやら帰るところのようであった。
「ちょっとーはっきり言いなさいよ。」
「あー、うるさいなー。二人の会話が聞こえないし、俺らの存在がばれるだろーがー。」
天使の二人はまたもや少し離れたところから見ていた。
「どうにかならないの?あれじゃいつまでたっても……。」
「ああ、そうだな。」
と言うとクランはターゲットの二人に近づいて行った。
「?何やる気かしら?」
トリンは眉をひそめている。
クランは徐々に近づいて行った。そして、
「あ、すいません。」
ターゲットの二人にぶつかっていった。
「……あ〜古典的な……。」
トリンは頭を抱えながら呆れてしまった。
「古典的で悪かったな。」
「もう戻ってきたの?」
「ほら、あっち見てみろよ。」
トリンの視線の先にはターゲットの二人が倒れているところだった。
「……さらに古典的な……。」
トリンは相変わらず呆れた声を出した。
大松は大慌てで立ちあがった。
「あ……す、すみません、大丈夫ですか?」
大松は何気なく曽根に手を差し出した。
「ありがとうございます。」
曽根も何気なくその手をつかんだ。と、その瞬間
「あ……。」
二人同時に声を出した。
「あ……その……。」
二人の顔には少し赤みがかかっている。
「曽根さん。」
大松が深呼吸した後、曽根に話しかけた。
「また……会っていただけますか?」
「……はい。」
曽根はゆっくりうなずいた。
「……なんだか見てるこっちが恥ずかしくなってきたわ。」
「まあまあ、それが俺達の仕事なんだから。」
クランとトリンはそんな二人を見つめながらつぶやいた。
「この後どうなるのかしら?」
「さあ?」
「さあって。」
「まあ、大丈夫だろ。なんと言っても天使である俺らが味方したんだから。」
「まあね。」
そう言うとクランとトリンはその場から離れていった。
「……お幸せに♪」
トリンは誰にも聞こえずそうつぶやいた。
さて、次は誰のところに天使が舞い降りるのか?
END
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