BunBun in X'mas


「あれ?」
「どうした、らいと?」
 X'masのぶんぶん店内、麦千代とらいとが珍しく仕事をしていた。
「いや……これ。」
 らいとの手には小さなプレゼントの包みがあった。
「それ……もしかして。」
「ああ、そうなんだよ〜。」
「……廃棄品持って帰るのにそんな小さい包みに入れるとは……頭を使う事を覚えたか、らいと。」
「ちが―――――――――――――うっ!!!!」
 らいと真っ赤になって怒鳴った。
「違うのか?」
 麦千代はあくまでも冷静に返した。
「お前、俺の事をどう思ってるんだっ!」
「いや〜生活に苦しいから……。」
 二人がそんなやり取りをしてると
「どうしたの?」
 奥からみるく店長が顔を出した。
「あ、店長。」
「いや、これ……。」
「らいとくん、それ……。」
 みるく店長が二人に近づいていった。
「それはらいとが見栄はって恋人がいるフリをしようと買ったもの……。」
「それもちがうわ―――――!」
「らいと、見栄はらなくていいんだぞ。いないのはわかってるんだから……。」
「だからちがうってっ!」
「そうよ、麦千代くん。」
 店長が二人のやりあいに口を出した。
「て、店長……。」
「見栄はっててもいいから売上をあげてくれれば……。」
「だからちがいますっ!」
「じゃ、万引か?」
「それもちがうっ、麦っ!」
「そうなの、らいとくん?」
 みるく店長の顔は笑っていなかった。
「ちがいますって。て、てんちょ―――!!!」

「……なるほど、気がついたららいとくんのレジの隅っこに置いてあったのね?」
「は、はい……。」
 店内に客がいない時、みるく店長達三人はレジ近くで座っていた。
「いてててて……。」
 ただし、らいとは何故か体がボコボコになっていたが。
「しかし、誰のなんでしょうかね〜?」
「そうね……二人とも、心当たり無いの?」
「……う〜ん。あ、そうだ。」
「?」
「どうした麦千代?」
「いや、今日確かりんぐちゃん来てたよな。」
「ああ。」
「ひょっとしたら……りんぐちゃん僕に……。」
「こらっ!何勝手な事言ってるんだぁっ!」
「まあまあ、らいと。」
「なにがまあまあだっ!」
「二人とも……そんな言い争いしてないで……あ、そうだ。」
「はい?」
「どうしたんですか?」
「中見てみない?」
「ほうほう、それはいい案ですな。」
「だな。」
 こういう時、誰一人として止めようとする人間がいないというのはさすがぶんぶんといった所だろうか。
「え〜と……あら?」
 包みの中から小さな紺色の箱が出てきた。
「ねえ……これって……。」
「やはり……。」
「だな。」
 三人は顔を合わせた。
「……で。」
 らいとが真剣な顔で言った。
「これ、なんでしょーねー。」
 みるく店長と麦千代は思いっきりずっこけてしまった。
「ら、らいと?」
「普通わかるでしょーーっ!!」
 思わず二人は大声をあげた。
「いいか、らいと、この中にはおそらく……。」
と言いながら麦千代は箱を開けた。
「……やっぱり。」
「ねえ。」
「あ〜。」
 らいとだけは間抜けな声を出していたが、店長と麦は顔を見合わせて笑っていた。
「なるほど、ゆびわかー。」
 箱の中にはエメラルドの指輪が入っていた。
「う〜ん、けっこう高価そうね〜。」
「おそらくらいとの時給だと3回ぐらい生き返らないと無理かな?」
「そ、そんなすんのか?」
「ああ、約24万ぐらいってとこだな。」
「あら、麦千代くんって目利きができるのね。」
「ええ、まあ一応。」
「……なあ、麦千代。」
「なんだ?」
「さっき俺が3回生き返らないと……って言ったよな?」
「ああ。」
「それで24万か。」
「ああ。」
「……それっておかしくないか?」
「ん?どこがだ?」
「えーと……俺が3回で24万だから一回で8万だな。」
「……ん?」
「で……一生なんだから……。」
「ちょっと二人とも。」
 みるく店長がらい麦コンビの会話をさえぎった。
「そんなことよりこれどうする?」
「あ、そうでしたね。」
「……そんなことって……。」

「本当に二人とも心当たりないの?」
「ええ。」
「気づいたらあったからな〜。」
「うーん……今日どんなお客さんが来てたっけ、麦千代くん?」
 みるく店長が麦千代のほうに向いた。
「ちょ、ちょっと店長、俺も今日はいたんですよ。」
「じゃあ、らいとくん誰が来たか覚えてる?」
「え〜〜〜〜〜〜と…………。」
 らいとは必死になって思い出そうとしている。
「らいと、覚えてないなら無理しなくていいんだぞ。」
「ね、麦千代くん。やっぱりおばかはおばかなのよ。」
「ちょ、ちょっと店長……。」
「で、麦千代くん誰が来たか覚えてない?」
 店長はらいとの言葉に耳も貸さず麦千代に聞いた。
「え〜と、今日はあのよく来るメガネの人と、その彼女と、坊主頭の学生と、よく来るコギャルと……ぐらいですかね、らいとのレジに行ってたのは。」
「ふーん……あやしいのはメガネをかけた人とその彼女よねぇ……。」
「麦千代、おまえよく俺のレジの客まで覚えてるなあ。」
「おまえが覚えないからだろ。」
「そうか?」
「だってお前あの二人覚えてないのか?クリスマスだからってとてもイチャイチャしてたぞ。」
「ああ〜。でもその客ってたしか最初お前のほうに並んでたけどお前がケーキをおでんの汁といっしょにいれようとしたから慌てて俺のほうに来たんじゃなかったっけ?」
「なんでお前そんなことだけ覚えてるんだよっ!」
「本当なの?麦千代くん?」
 みるく店長の顔は笑ってなかった。
「あ、いえその……あ、そんなことより、だからその二人があやしいんですよ。」
「なるほど、その人が持ち主ってことね。」
「うーん……でも……ちょっと待ってくださいよ……。」
「へ?」
「どうしたの?」
「あの男がそんな指輪を買えるほどお金があるとは思えないですよね〜。」
「確かに。」
「あ〜。」
 店長とらいとははおもわずうなずいた。
「てことは……あのコギャルですかね〜。」
「彼女のなら……。」
「?」
「私がもらっちゃおう♪」
「な……。」
「何言ってるんですが、店長!」
 麦千代が大きな声を出した。」
「やっぱりダメよね〜。」
「それなら私の物です!」
 麦千代はどうどうと宣言した。店長とらいとは思いっきりずっこけてしまった。
「違うだろ、麦!」
 らいとも大きな声をあげた。
「言っとくがお前のでもないからな。」
「わかってるって!とりあえず、遺失物箱に入れとこうぜ。」

 そして翌日。らい麦コンビが仕事につく時間になった。
「なあ……麦千代。」
「なんだ?」
「まだあのゆびわ誰も取りに来てないみたいだな。」
「うーん……しかたない、やはり僕が。」
「こらこらこらっ!」
 そんなことを言っていると。
「ちわーす。」
 協配のおっちゃんがやって来た。
「あ、どうも。」
「おつかれさまでーす。」
 協配のおっちゃんはテキパキと仕事をこなした。
 そして麦千代もそれにあわせてテキパキと働いた。
「はい、どーも。これでOKと。」
 そうこうしているうちにおっちゃんの仕事は終わっていた。
「はい、おつかれさまでした〜。」
「はいよ〜。あ、そうだ。」
「はい、なんでしょう?」
「昨日小さな包み忘れていかなかった?」
「え?」
「いやね、昨日イブで奥さんにプレゼントしようとしてたんだけどどっかに忘れちゃってさあ〜。」
「あ、ありますよ。」
「おっさんのだったのかよ。」
「あ、ここか〜。」
 おっちゃんはうれしそうな声を出した。
「はい、どうぞ。」
 麦千代はおっちゃんに包みを手渡した。
「いや〜よかったよ〜。」
「おくさん、よろこぶんだろーなー。」
「いや〜それがね〜。」
 おっちゃんの顔に少し影がさした。
「昨日プレゼントなくしたって言ったらさ〜ちょっともめちゃってさ〜。家に帰れないんだ。」
「は……。」
「はあ。」
 らい麦の顔はひきつっている。
「じゃ、ありがとうね。」
 そう言っておっちゃんは店を後にした。
「……なあ、らいと。」
「ん?」
「結婚っていいものなのかなぁ……。」
「好きな人とだったら幸せなんじゃねーの?」
「そっか……りんぐちゃん、あんなことやこんなこと引き受けてくれるかなぁ……。」
「麦千代―!今何考えたー!」
「いや、僕とりんぐちゃんのステキな将来設計……。」
「こらぁ〜っ!」
「うるさいっ!」
 奥からみるく店長が顔を出した。
「仕事中に叫ばないの!」
「いや麦千代が……。」
「人のせいにするのはよくないぞ、らいと。」
「だーっ!!!お前のせいだろが〜!」
「だからうるさいっ!」
 コンビニぶんぶんは、クリスマスもにぎやかに営業中〜♪

Merry X’mas!

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