朝が来る。
 古ぼけた郵便ポストを覗く。
 何も届いていない事を確認する。
 朝日が昇ることを感じながら茶を淹れる。
 茶を飲みつつ時間が過ぎる。
 茶を飲み終え、扉を開け、外へ出る。
 もう訪れる人も減った小屋を離れ、森の中を歩いていく。
 少し歩き、別の小屋を見つける。
 その小屋を遠くから見つめる。
 中に誰か居る事を確認し、その小屋から離れる。
 別の小屋を見つける。
 その小屋は廃屋になっている。ふと中を覗くと今まで誰か居た形跡、しかし突然神隠しにあったかのようなまま、廃屋の中は生活の痕跡を残したまま、ほったらかしにされている。
 その廃屋から離れ、別の廃屋へと向かう。その廃屋も神隠しがあったかのように生活の痕跡が残っている。
 その廃屋には楽しかった時代の写真が残されている。
 その写真に写った顔は笑顔である。笑顔のまま、残されている。消息はわからないし、調べようともしない。
 その廃屋からも離れる。次の廃屋へと向かう。
 廃屋があった場所には、瓦礫ができていた。廃屋が力尽き、瓦礫になったようだった。
 その瓦礫から離れる。別の瓦礫へと向かう。
 別の瓦礫は、風に吹かれたのか無くなっていた。
 その場を離れ、広場へと向かう。
 広場には時代遅れの玩具が置いてある。その玩具はたまに誰かが触りに来るが、すぐに触るのを止める。
 その玩具を眺めながら昔想いにふける。
 その場を離れ、自分が最初に居た小屋へ戻る。
 小屋には誰かが尋ねてきたのか、足跡を見つける。
 足跡を眺めつつ、古ぼけた小屋へと入る。
 郵便ポストを覗く。何も入っていないことを確認する。
 椅子に座る。外を眺めると日が落ちている。
 本棚から日誌を取り出し何事か書き始める。
 書き終わる。
 日誌を本棚に戻す。
 しばし、昔のことを想いだす。
 かつてはそれなりに人も訪れていた。廃屋も無く、他の小屋にも人が住んでいた。
 それも過去の話となったが、この古ぼけた小屋を離れようとはしない。長い時間動かなかった事はあったが、それでもこの古ぼけた小屋を見捨てようとは思わなかった。
 本棚へ目をやる。
 本棚には多くの書物がある。今はそれを目にする人も減った書物がある。
 書物から目を離す。
 朝が来る。
 古ぼけた郵便ポストを覗く。
 何も届いていない事を確認する。
 朝日が昇ることを感じながら茶を淹れる。
 茶を飲みつつ時間が過ぎる。
 茶を飲み終え、扉を開け、外へ出る。

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