起きなさい……起きなさい……。ミケランジェロ、起きなさい……。

 ……誰だ、オレを起こすのは?うーん……。

 そう思いながらオレは目を覚ました。すると、オレの目の前には見なれない景色が広がっていた。???巨大な柱。優美なフラスコ画。そしてきれいな女性。
「ミケランジェロ様。」
 ?なんでコイツ、オレの名前知ってるんだ?
「お待ちしておりました。私の名前はカヅキ。この神殿で神官をしております。」
「神殿?」
「ええ。この神殿はユウ様を奉ったもの。」
「ユウ様?」
「若くしてお亡くなりになられたというユウ様。この国の守護神なのです。」
「……じゃああの声はユウとかいう奴の声だったのか?」
 カヅキに聞こえないような小さい声でオレはつぶやいた。
「この国は今危機に瀕しています。黒竜軍団が突如攻めてきたのです!」
「黒竜軍団……。」
 どこかで聞いた事のある名前だった。しかしよく思い出せない。
「黒竜軍団はこの国の姫をさらっていきました。お願いします!どうか、どうか姫を救い出してください!」
「……わかった。」
 オレは考えるまでもなく姫を救うことを決意した。「黒い鷹」と呼ばれるこのオレだ。姫を見事救い出してやる!

 それからのオレの旅は始まった。言っちゃなんだがけっこう辛い旅だった。まず街の中では買い物に行ったらわけのわからん店員で薬草を買うだけで爆発が起こったり、女に声をかけられたと思ったら実は男だったり。街の外ではさらに苦難の連続だった。なにせいきなり巨大なカエルが襲ってきた……と思ったら人間の女で、なんでも「今日のラッキーアイテムだと占い師に言われた」らしいが……まったく人騒がせな奴だったぜ。そういやオレが一度ピンチになった時に助けてくれたあのくのいちは元気にしてるんだろうか。姫を救い出したら礼をしなきゃダメなんだが……今どこにいるんだろうな。そういやあの娘がくれたポプリで助かった事もあったっけ。そしてオレが一番印象に残っている戦いもあの双子なんだよな。

 その時オレは見晴らしの良い草原を進んでいた。すると突然目の前に
「待ちなさいっ!」
「ここから先には行かせませんっ!」
 と言いながら同じ顔の女が二人現われた。
「私はマチコ!」
「私はヤヨイ!」
「「二人あわせてそーせーじ☆ウイザード!」」
 オレは嫌な予感がしていた。
「覚悟なさい!うんにゃらめか〜〜〜。」
 マチコと名乗る方が怪しげな呪文を唱えた。すると、
「うわわわわわっ!」
 オレに向かって雷が落ちてきた。
「どう?私の魔法は?」
「続いて私が……うんにゃらめか〜。」
 ヤヨイと名乗る方が同じ呪文を唱えた。すると今度は
「うわぁっ!」
 炎が俺に向かってきた。
「あちぃっ!」
 オレのしっぽが少し焦げてしまった。
「引き返すならいまのうちですヨ。」
「このそーせーじ☆ウィザードにはかなわないわヨっ♪」
「ぐっ……。」
 オレは正直、ダメだと思った。その時、くのいちの娘からもらったポプリを思い出した。
「……。」
 ダメで元々、オレはそのポプリを投げつける事にした。
「えいっ!」
「「あいたっ」」
 見事に二人にポプリを当てる事が出来た。その時、変な事が起きたんだ。
「……あ、シュニン〜。」
 まずヤヨイのほうが顔を赤らめたかと思うと誰かの名前を呼び始めた。
「は、はいっ!今行きます〜。」
 そしてどこかへ走っていってしまった。
「う、うわ〜。」
 そしてマチコの方も何か様子がおかしくなっていた。
「す、杉が……ブタクサが……う、うわ〜。」
 と、木や花の名前を言ったかと思うと、
「こ、こっちに来ないで〜!」
 と叫んで走っていってしまった。おそらくあのポプリには幻惑の効果でもあるんだろうな。

 そしてオレは今、黒竜軍団のボスの部屋の前に来ている。
「いよいよか……。」
 オレは思わず武者震いをしてしまった。
 そして、オレは静かに扉を開けた。部屋の中は暗闇だった。
「姫っ!御無事ですか!?」
 オレは部屋に入ると力の限りの声を出した。
「姫!?姫!?」
 すると
「誰?」
 と、声がした。
「姫?姫ですか?」
 暗闇の中から一人の女性が姿を現した。
「あなたは?」
 彼女の身なりは高貴なものだった。まちがいなく彼女が姫だろう。
「私はぶらっく・にゃいとのミケランジェロ!姫、あなたを救いに来ました!」
 オレがそう言うと姫は困った顔になった。
「姫?」
「……ごめんなさい。」
 姫はそう言うと頭を下げた。え?
「私……彼と幸せになります!」
 ………………ええええっ!?
 その時、彼女を呼ぶ声がした。
「は〜い、ゴロちゃ〜ん♪」
 そう言うと彼女はまた暗闇の中へと消えていった。
 つ、つまり姫は敵である黒竜軍団のボスと……結婚!?そ、そんな〜オレの苦労は〜……。

「ねえ、ママ。」
「どうしたの?」
「ミケ何の夢見てるんだとろうね。」
「さあ……ひょっとしたら大冒険の夢でも見てるんじゃないかしら。」
「ふ〜ん。」
 ミケは眠っていた。
「う〜ん、なぁ〜ごぉ〜。」
 その泣き声は、何処か悲しげなものでした、とさ。
めでたしめでたし


パロディ小説の部屋
小説目次へ
ホームへ