恋人同士が部屋に居る。男は台所でコーヒーを準備している。女は昼間の疲れが出たのか、ソファーにもたれかかって眠っている。
男、コーヒーを二人分持って戻ってくる。
男「コーヒーできたよ……(女が寝てるのに気付く。)なんだ、寝てるのか。まあ、この所仕事が忙しいって言ってたし。」
女「ん……んん……」
女、寝返りを軽く打つ。
男、コーヒーを飲みながら女の寝顔を覗きこむ。
男「いったいどんな夢見てるんだろうか。」
女「……良ちゃん」
男、寝言の「良ちゃん」に驚き女の顔をさらに覗きこむ。
男「(ほっとしたように)……気のせいか?」
女「早く……早く……。」
女、さらに寝言が続く。
女「早く……して。」
男「!!」
男、カップを持つ手が震える。そして慌ててまた女の寝顔を見る。
女「良ちゃんてばー。」
男、良ちゃんという名前の心当たりを探そうとする。
男「えーと原田は純也だろ。名倉は茂で、堀内は俊久だしな……。」
男、だんだん動揺しだす。
女「(嬉しそうに)良ちゃーん、そこはダメだって言ってるでしょー。」
男、ますます気が気じゃない。
男「内村は義一だろ、南原は伸ちゃんだしなぁ。」
女「もう、本当に甘えんぼさんなんだから……。」
男「(もう寝言に反応さえしない)お、大木は淳太郎、大内は太郎だろ……。」
女「もう、好きにしていいよ。」
男、女の顔をじっと見る。
男「(ポツリと)でも……ほれちゃったからなあ……」
男、諦めたようにうなだれる。と、その時
女「良ちゃんの尻尾、本当にきれいだねー。」
男、はっとしたように顔を上げる。
男「あ、ペットね、ペット。あ、なんだペットか。」
男、安堵の表情で伸びをする。
男「さ、俺はコーヒーカップ片付けるか。」
男、そう言ってコーヒーカップを台所へ持っていく。
女が一人残される。突然、
女「でも……誰かにばれたら私捕まっちゃうよね、密輸したってさ。」
台所の方からコーヒーカップの割れる音がする。
男「(動揺して)今なんて言った!?」
男、慌てて台所から現われる。
女、何も言わない。
男「おい、なんだよ密輸って。おい、お前何やってんだよ。」
男、必死になって女を起こそうとする。
男「(女をゆすりながら)おい、起きろよ。」
女「……ん……」
女、起きそうになる。が、
女「(寝言で)ばれたら……そいつ殺しちゃおっかな。」
男、ゆするのをやめる。
男、呆然としながら、
男「(ポツリと)俺、遠くへ逃げよう。」



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