「ふははははは……。」
 空気から笑い声が聞こえてきた。


「誰だ!」
(サケウス……。)
「ふははははは……。」
(何?何?この空気……生きてる……?)
「エアさん、気をつけてください。何かいます!」
「この森に入ってくるとは……奇特な奴じゃな……。」
(はっきりと声が聞こえた!)


 誰かの声が響いた。
 正しくは空気の中で響いた。

 誰だっ!
(……誰だ?……こんなことができるのは……いったい……。)
「これは失礼、今姿をあらわしましょう。」

 風が一箇所に集まり始めた。

(いったい、何が起こったというの……。)
「気をつけてください、エアさん。」


「どうも、はじめまして、迷い人達よ。」
(何だ……このじじいは……?)
 誰だっ!
「私はこの森に棲む魔法使いだ。」
(魔法使い……?)
 いったい、その魔法使いが何の用だ!
「それはこちらのセリフです。あなた方はいったい何をしているのですか?」
 ……道に迷って野宿しているだけだ。
「ほほう……。」
 ……。
(何なんだ、このじじい。いったい何のようなんだ?)

(……サケウス……。)
「この森は私が何年間も守る森です。そこを踏みにじろうとするものを許すわけにはいきません。」
(……)

 違う!

(サケウス?)
「私達はこの森を踏みにじるつもりはない!」
「本当ですか?」
「本当だ!」
「ふむ……。」

 魔法使いはしばし黙った。
 サケウスとエアは緊張感で体を支配されていた。
「ならば」
 魔法使いは口を開いた。
「それを証明していただきたい。」

 証明?
「証明って……どうやって?」
「わしについて来い。」
(エアさんはなんとしても……守る。)

 サケウスとエアは魔法使いに従うことにした。

次のページへ
前のページへ
小説目次へ