ウネクトル城

 翌朝。広場にて。
 エダンダが演説をしている。
「いいですか皆さん!我々は苦しい時こそ一致団結しなければならないのです!」
 それを熱心に聞いている聴衆の中にミリゥがいる。
「つまり!私の言いたいことは一人一人が原因について考え、それを解決することなのです!」
 ミリゥは昨夜聞いたジェイの友人の事が気になっていたのである。
「一致団結!それこそが原因となっている悪を打ち破る事ができるのです!」
 ミリゥは演説の途中で広場から離れた。
「我々の力をあわせれば怖いものなどないのです!」

 それと同じ頃。王の間。
「国民は平和に暮らしておるなぁ、わがままさえ言わなければ。」
 ウネクトル王国3代目国王スハントマはそうつぶやいた。
「陛下、お呼びでしょうか。」
「おお、来たかジェイ。」
 王の間にジェイがやってきた。
「はじめまして、陛下。」
「まあそう硬くなるな。」
「しかし……王の間に入るのは初めてなものですから……。」
 ジェイはまだ緊張が抜けていなかった。
「早速本題に入ろう。お主の知り合いにエダンダというのがおるな。」
 ジェイの顔はこわばった。
「ははっ。幼馴染です。」
 ジェイの声は緊張していた。
「あの金貸しの男が最近街角で演説しておるという噂を聞いてな。一度わしの前でもその演説をさせたいのだが……お主、呼んできてくれぬか?」
 ジェイの顔からわずかに緊張が解けた。が、次の瞬間、
「あの男はどうやら反乱を企てておるらしい。ここに呼んだ所で亡き者にしようと思うのだ。」
 ジェイの顔は再び……しかも最高潮に緊張に包まれた。
「頼むぞ。上手く呼んできてくれ。」

 その日の晩、ジェイは見張り小屋に戻ってきた。
「おかえりー。」
 そこにはミリゥがいた。
「何でまだいるんだ?」
 ジェイの声は少し重いトーンだった。
「だって今夜も野宿しようと思ったんだけど……ほかの兵士に捕まってさ。」
「……そうか……。」
「……どうしたの?なんだか暗いみたいだけど……。」
「……私は何のために兵士になったんだか……。」
「え?」
「今日王に呼ばれたんだ。」
「ほほう。」
「エダンダを罠にかけるから呼び出してこいと。」
「どうするの?」
「迷ってる。昨日あなたが言ったように迷ってる。」
「じゃあ、聞き方変えるけどあなたは何がしたいの?」
「……。」
 ジェイは黙っている。
「あなたにとって大事なものは何なの?」
「……。」
「……ねえ。」
 ミリゥの声のトーンが落ちた。
「結局、卑怯なのよねあなたって。」
「卑怯、ねえ。」
「……悔しくないの?こんな吟遊詩人の女に言われてんのよ?」
「……だな。私はエダンダを信じる事にします。」
「なるほど。後悔しないね?」
「さあ?やってみなけりゃわかんないだろ?」
 ミリゥはそれに笑顔で返した。

次のページへ
前のページへ
小説目次へ