「日本のカルトスキャンダル、千石イエスとイエスの箱舟事件」


 2001年12月、新聞に「千石イエス死亡」記事が載った。
 ほとんどの人は久しぶりに聞いたであろう「千石イエス」の名前。この「イエスの箱舟事件」はライフスペースや法の華やオウムなどよりも以前の事件であり、いわば日本カルトスキャンダルの先駆け、とも言える事件である。
 さて、この事件も信者となった女性達が帰ってこず、その家族が訴えたわけだが、この信者達は自発的に協同生活をしていたのだ。
 この事件の特徴としてオウム、ライフスペース、法の華と違って教祖である千石イエスは逮捕されていないのである(告訴はされたが不起訴処分になった)。そのため、現在でもこのイエスの方舟は存在、活動している。
 またこの「イエスの方舟」は我々がイメージする宗教像とはけっこう離れたイメージがある。例えば普通宗教が嫌悪感を露骨に示す風俗店(クラブ)を経営していた、というのも大きな特徴である。いくら集会所を兼ねてるとはいえ、堕落の原因となる、といった理由から快く思われていないものを最大限に利用している。また千石イエス氏は信者達から「教祖様」とかいった大層な呼ばれ方ではなく、「おっちゃん」と呼ばれていたり、他にも「誠意」という言葉を否定するなど、本当に一般的にイメージされる宗教像から遠く離れている。
 この「イエスの方舟」は宗教を否定している、ともとれるかもしれない。つまり、既存の宗教を壊して新しい宗教、もしくは世界や価値観を見出して作り上げようとしていたのかもしれない。本当に「方舟」として新世界に漕ぎ出そうとして。