「あーヒマだなー。」
 ある木曜日の夕方、らいと君が一人で店番に励んでいる。いつも彼とコンビを組む麦千代君はこの日、別の用事があるらしく休みだった。よってこの時間に働いているのは彼とみるく店長だけなのだが、そのみるく店長は現在何かしらの用のため奥で誰かと電話をしている。
「今日はあまり客来ねーなー。」
 その日は何故か店内に客の姿はなかった。と、
「あ、いらっしゃいませー。」
 中学生らしき少年が店内に入ってきた。
 彼の名はうぐいす君、空降中学の学生である。この日授業が終わった彼は夜に食べるお菓子を買いにやって来たのである。
「え〜とポッ○ーに、ビ○コに、ポ○チに、あとチョ○ボールっと。」
「おい。」
 突然うぐいす君の後ろから男の声が聞こえた。
「あ……悪野先生〜。」
 うぐいす君の後ろにいたのは空降中学体育教師、悪野であった。
「おいお前、今何買おうとした。」
「え……お菓子を……。」
「買い食いはどうだった?」
「え……でも家で食べるぶんだし……。」
「でもなーそんな証拠ないしなー。」
「ええ〜そんな〜。」
「ま、見逃してやってもいいけどな……ん?」
 悪野はうぐいす君が持っているお菓子の中からチョコ○ールを手にした。
「何だ、これは。」
「それは……チョコボ○ル……。」
「この“ピーナッツ”はどういうことだ。」
「え?」
「なぜ“キャラメル”にしないっ!」
「え?」
「ピーナッツだとすぐに食べ終わってしまってもったいないだろ!キャラメルにしろ!」
「でも〜僕はピーナッツのほうが……。」
「口答えするな貴様っ!」
 悪野先生はうぐいす君にキャラメル味を無理やり持たそうとしている。
 と、その時、
「ふはは!弱みに付け込み生徒からお菓子を取り上げようとは笑止千万!」
「呼ばれてとびでてじゃじゃじゃ参!悪行みかねていざ見参!」
「校長に代わっておしおきよ!」
「「「「「教師戦隊、ティーチャロン!」」」」」
 いつのまにか店内にブルー、イエロー、グリーン、ピンク、そしてグレーのスーツを着た人が五人立っている。
「なあ……前も言ったけどなんでみんな青なんだよ。」
 悪野はあきれ返るようにしてつぶやいた。たしかに、それぞれのスーツは多少青みがかっている。
「そんなことはどうでもいい!私はティーチャロンリーダー!ブルー青葉!!」
 そして黄色いスーツに身をまとった女性がポーズを決めながら名乗ろうとした。が、その時、
「そして以下略!!」
「またですか!」
「前も私達紹介してもらえなかったじゃないですか!」
「しかも今度は私までー!この美しい私が目立たないなんてそんなこと許されると思ってるの?」
「おい、ちょっと、おい。」
 悪野先生は完全にほったらかしにされている。
「あの〜すいません〜。」
 うぐいす君は悪野がティーチャロンに気をとられているスキにレジに行き精算をすまそうとした。
「あ、はい。ありがとうございます。」
 らいと君はレジ打ちをとっとと終わらせた。そしてうぐいす君は家路につき、らいと君は棚出しのための商品を取りに店の外へといってしまった。
「さあ、覚悟なさい悪野先生!」
 イエローが大げさに叫んだ。
「あー!だからおれは何もしてないだろ!な、うぐいす……あ、いない!」
「貴様……か弱き生徒を誘拐するとはなんて奴だ!」
「だからおれは何もしてないだろーがー!」
「問答無用!覚悟!濃硫酸!」
 ブルー青葉がバケツ一杯の濃硫酸をぶちまけた。
「こら、お前ら!何考えてんだ店の中で!」
「ふはははは、正義の力の前におじけづいたか!」
「いったい何考えてんだー!」
 そこからはティーチャロン(特にイエロー)と悪野先生の乱闘である。もう何と言っていいやら……本当に正義の味方だろうかと疑ってしまうような戦い方だった、とだけ書いておこう。それからもう一つ、本日のイエローはスパッツをはいていた事もここに書いておく。
 戦いが始まってから10分ほどした時だった。
「ああ、もういい!ちくしょー覚えてろ!」
 そう捨てゼリフを残して悪野先生は店の外へと逃げて行った。
「私達の勝利だ!みんな!」
 ブルーがガッツポーズをとった。
「しかし……。」
 4人が喜んでいるのとは別にグリーンだけが浮かない顔をしている。
「どうした?グリーン?」
「これ……どうします?」
 店内の様子は最悪としか言いようのないありさまだった。商品は床に散乱し、倒れてる棚もある。挙句の果てに濃硫酸のせいで床に心なしか穴があいている。
「……逃げよう。」
 ブルーがポツリとつぶやいた。
「でも……それって本当に正義でしょうか?」
「気にするな!グリーン!」
 そう言うやいなやブルーは店の外に逃げていった。それにつられていくように4人も逃げていった。
 そして店の様子がおかしいとみるく店長が電話をはやめにきりあげて店の中へと戻ってきた。
「……何、これ?」
 みるく店長の顔は明らかにこわばっていた。
「……らいと君ね……。」
 その時タイミング悪くらいと君が商品を中に入れて店の中に戻ってきた。
「商品入れるの終わりましたー。……え?」
 らいと君の顔はあっけにとられている。
「らいと君?これはどういう事?」
 みるく店長の体から怒りのオーラが発している。
「え、いや、俺ずっと外に行ってて……。」
「店を誰もいない状態ににするってどういう事?」
「……そ、それは……。」
「らいと君、時給200円にするか、内臓4個ほど売るか、普通に借金が増えるかどれがいい?」
 らいと君の顔は完全に青ざめている。みるく店長の顔は怒りで赤くなっている。
 ちなみに、うぐいす君の買った品物の中にはチョ○ボールのピーナッツだけでなくキャラメルもあったことをつけくわえておく。

END




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