街の中心地から離れた山の中に小さめの城が建っていた。その城は冷たさを感じさせる城であった。その城には誰一人訪れるものはなかった。そのためか、時折その城が寂しそうに見える事もあるという。
 その城に住んでいる者はたった一人であった。それは魔女である。彼女は長年他者を忌み嫌い孤独な時を過ごしていた。
魔女の城

 彼女が一人で暮らしてから何年の時が過ぎたのか……それはわからないが豪雨の日にいつもとは違う変化が起きた。
 その日彼女はいつものように古代の書物を読んでいた。彼女は様々な書物を城内の書庫に持っていた。歴史、魔術、文学、軍法、政治学、農業、そして御伽話のようなものまでそこにはあった。まるで古代の知識が全てそこで眠っているかのようにそこにはあった。その中からこの日はどうした気まぐれか御伽話を読んでいた。その内容はというとお姫様が運命で結ばれた王子様に出会い幸せな結婚をするという子供だましであった。
 彼女がその話の終盤にさしかかった頃であった。城の入り口で雨音に混じって何か物音がした。彼女はいぶかしく思った。
「おかしい……どこか壊れたのかね。この城もだいぶボロだからね。」
 彼女はそんな事をつぶやきながら入り口へと歩き出した。

「……特に何も壊れてないよねえ。気のせいだったんだろうか……。」
 魔女は首をひねっていた。物音のしたらしき場所へ来たのだが特におかしいところはない。
「外か……。」
 そう独り言を言いながら扉を開けた。


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