外に出て彼女は雨は強く降るのを見た。空は黒くよどんでいた。そして彼女は目線を空から下に向けた。
「―――!」
 彼女の目線の先には一人の美しい女性―とはいってもまた16、7歳ほどのようだが―が倒れていた。その女性の服装は何やら高貴な感じがするものだった。
「……どこかのお姫様かなんかかねえ。でも何だってこんな」
 そう言うと魔女はあたりの景色を見まわした。
「寂しいところに来ちゃったのかねえ。」

 魔女は適当な寝室―おそらく元は客間だったのだろう部屋―に寝かすことにした。
「……はあ。」
 魔女は部屋に戻るとため息をついた。
「厄介なお荷物積み込んじゃったのかねえ。」
 魔女はそうつぶやいた。
「そうだ。」
 魔女は先程まで自分が座っていたところまで戻ると読みかけの本を手にした。
「まったく単純な話だねえ。」
 そう言いながらページをめくり始めた。

「……はあ。やっぱりか。」
 魔女は本を静かに閉じた。
「やっぱりお姫様が王子様と仲良くいつまでも幸せに暮らしました、か。」
 魔女は鼻を鳴らした。その顔は心なしか寂しげである。
「そういやさっきの子は……?」
 魔女は静かに部屋を出た。


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