翌朝。魔女はいつものように眼を覚ました。
「……。」
 魔女はいつものように起き上がった。と、
「おはようございます!魔女さん。」
 ドアが開きリゥルが挨拶をしてきた。
「……ああ、おはよう……。朝から元気だね。ところで……。」
 魔女はゆっくりと口を開いた。
「本当にいいのかい?帰らなくて?」
「ええ。」
 リゥルの口調ははっきりとしていた。
「私……もう決めました。二度と城には帰りません。確かに彼を失ったのは辛い事かもしれない。でも、新しい出会いもあったから……。」
 リゥルの口調はさらに強く、しかしどこか寂しげだった。
「……そうかい。」
 魔女は少し下を向いた。魔女の頭にはこの土地に始めてやって来た時を思い出していた。
 それは、魔女がこの地に住む事にした時自分で決めた事。たしかにあの時の自分は全ての事に絶望していた。でも希望は失っていなかった。いつの日か、また誰かを信じる事ができたならその時は……。予定とはちょっと違っていたが、これもまたいいかな、と思える自分がいる。それだけで、魔女には十分だった。
 また、リゥルの心もまたすっきりとしたものだった。私がいるべき場所が見つかったのだと。いつまでここにいられるかわからないが、ただ今もう少しだけこのままでいられるのなら……。リゥルはそんな事を考えていた。
 そう、今だけでもこのまま……それだけが二人の願いだった。

〜END〜



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