「………………?」
リゥルの目の前が突然真っ暗になった。いや、リゥルはいつのまにか目を閉じていた。リゥルはゆっくりと眼を開けた。
「……それから私は……。」
リゥルが眼を開けると視界は暗かった。その暗闇の中から魔女の声がする。
「村を離れ……一人で暮らすようになった。他人と関わりあえばまた何か嫌な目にあうんじゃないかと恐れてね。でも一人で暮らしていても私は怖かった。そこで私は……魔女になった。」
リゥルの眼がはっきりと開いた。リゥルはあたりを見まわした。しかし、魔女の姿はどこにもない。
「魔女になり、私は一つの噂を流す事にした。その魔女は残酷で……悪魔の力を借りていると、ね。その噂はうまく広まったよ。その結果ここへやって来る奴はいなくなった。あんたをのぞいて、ね。」
だんだんと魔女の姿が現れてきた。しかし、魔女の姿がはっきりしてきてもまだその表情は見えない。
「……あんた……いったいどう思う?」
その時、リゥルは魔女の顔がはっきりと見えた。魔女の眼は泣いていた。
「……。」
魔女は黙ってリゥルを見つめている。
「私……。」
少しの沈黙の後、リゥルが口を開いた。
「私……悲しいです……。」
リゥルの目は潤んでいる。
「……悲しい……。」
魔女はか細くつぶやいた。
「ええ……あなたが人を信じられなくなった事に……。」
リゥルの眼から涙がこぼれた。魔女はリゥルの眼を見ずにつぶやいた。
「……何で泣くんだい……こんな……私のために……。」
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