そこはある村の中。
 その村に一人の美女が住んでいた。その美女は一人で暮らしていた。
 村では彼女を巡っての争いが起こっていた。しかしその争いは彼女の心は無視されたものであった。
 彼女の心はいつも孤独だった。
(誰も私を愛してくれない。私を好きだという人はうわべだけが好きなんだ。私を嫁にしたいと言う人は私が便利だから嫁にしたいと思っているんだ。私を愛してくれる人なんていない。……嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。……誰か……助けて……。)
 ある日、彼女を誰が自分のものにするかということで決着をつけるべきだと話が持ち上がった。そこで決着方法として村で最も強い者がなるべきだということになり闘いが行われる事になった。
 それを聞いた彼女の心はさらに閉ざされてしまう事になった。ただでさえこの決着方法は彼女の心を無視したものだったし、他の女からの強いやっかみを生み出す事になった。彼女は涙の出ない悲しみに襲われていた。
 そしてその決着の日。その村にはすでに彼女の姿は無かった。必死になって探されたが結局見つからなかった。その後その村にはこんな噂が流れた。彼女は人さらいにさらわれどこかの金持ちの妾として暮らしているのだと。しかし、その噂の後になって新たな噂が流れた。彼女は誰かと想いあい、その男と駆け落ちをしたのだと。その噂が流れた時、男たちは深い憎しみを覚えた。自分たちは騙されたのだと。自分たちの心をもてあそんだ悪女なのだと。


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