翌日。玉座の間にて。
 エダンダは玉座に座っていた。部屋の中には他に誰もいない。
「失礼するよ。」
 ジェイが玉座の間へと入ってきた。それを見たエダンダは声をかけた。
「待ってたぞ。」
「何だ、いったい?とにかく話があるんだが……。」
「私からも話があるんだ。」
「何?」
「昨日おまえに言われてちょっと考え直したんだ。それでな、周りの国と同盟を結ぼうと思うんだが。」
「本当か?ありがたい。いや、私は昨日の話をまたしに来たんだが……とりこし苦労だった見たいだな。」
「それでだジェイ。おまえに行ってきてもらいたいんだ。」
「?なぜ私なんだ?」
「おまえは正直な話私よりも人当たりがいいからな。適任だと思うんだが。」
「なるほど……。」
「引き受けてくれるな?」
「ああ、ありがたく引き受けるよ。」
「それから明日の式典には出てから出発してくれ。」
「わかったよ。」

 ジェイがいなくなった後、また玉座の間にはエダンダのみが残された。
「……明日……か。」
 エダンダはつぶやいた。
「明日がジェイの最期だな。」
 エダンダは笑っている。
「馬鹿な奴だ。裏切り者に仕立て上げられるとも知らないで。」
 エダンダは一人そうつぶやいていた。しかし、その独り言を他人に聞かれてるとは気づかなかった。

 ジェイは城にある指揮官室で明日の出発準備をしていた。と、ドアをノックする音が聞こえた。
「誰だ?」
「私です、ゼヌです。」
「入って来い。」
 部屋に入ってきたのは新入りの兵士であるゼヌだった。兵士にしては小柄なゼヌだったが正直さとジェイへの忠誠心は信じることのできるものだった。
「どうした?」
「お話があります。」
「何だ?」
「ジェイさん、明日、この国を出られるんでしたよね。」
「? ああ。」
「それは罠です。」
「何?」
 ジェイの顔は引きつった。
「エダンダは……ジェイさんを裏切り者に仕立てあげる気です。」
「……?」
「明日使者として行くのは隣国に情報を流すためだとでっち上げてジェイさんを殺すつもりなんです。」
「……。」
「ジェイさん、お願いがあります。」
「……何だ?」
「革命を起こしましょう。」
「……!」
 ジェイの顔はさっきよりも引きつった。
「みんなエダンダの政治に苦しんでいます。ジェイさん、あなたなら兵隊は全員あなたの方を信じます。お願いします!私たちを導いてください!」
 ジェイはゼヌの問いに一言だけしか答えられなかった。
「……一晩考えさせてくれないか……。」

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