ジェイの家ではミリゥが笑顔で迎えた。
「おか……えり……?」
明らかにいつもと違うジェイの様子にミリゥは気づいた。
「……どうしたの?」
「……。」
ジェイは少しの間何も答えなかった。
「……ねえ、ジェイ?」
「あ、ごめん。」
ジェイは我に返ったようだった。
「本当にどうしたの?昨日よりも様子がおかしいわよ。」
「……明日出かけるんだ。」
「え?」
「エダンダに頼まれてな。講和の使者で隣の国に行くことになったんだ。」
「そうなんだ。」
「で、一緒に行かないか?」
「え?一緒に行っていいの?」
「本当はダメなんだけどな。だからこっそりと行かないか?」
「そうね……。」
ミリゥは少し考えるふりをした。が、すぐに
「行くっ!」
「了解。」
「あー楽しみだなー。革命以来仕事が忙しいからって一緒にいる時間が短かったけど……やったー♪」
「ただひとつだけ条件があるんだけど。」
「……な、何?」
ミリゥは怪訝そうな顔になった。
「出発は別々なんだ。」
「えー?何でー?」
「こっそり行くわけだから……二人だと目立つだろ?それに明日式典があるんだよ。」
「そういえば……エダンダが正式に指導者になるためのものだっけ?」
「そう。だから私もそれに出なきゃいけないんだ。」
「そっか……わかった、先に出発してるね。」
翌朝。
「じゃ、先に行ってるね。」
町の中心にある馬車駅にミリゥとジェイはいた。
「ああ、私も急いでいくから。……そうだ。」
ジェイはポケットから見覚えのある箱を取り出した。
「これ……。」
ジェイの手にはオルゴールがあった。
「これ、一緒に持っていっててくれないか?」
「いいけど……どうして?」
「私が到着するまでに宿題の詩を完成させておくこと。」
「えー?」
ミリゥは明らかにいやそうな顔をした。
「そうでないと観光とか先に一人でしちゃうだろ?」
「むう……よまれてたか……。」
「やっぱりか。」
ジェイは笑っている。
「まあ、頼むよ。二人の……思い出として……。」
ジェイは少しさびしそうな表情をした。
「なーに暗くなってんのよ!離れ離れになるのはたった一日だけじゃない。それぐらい我慢しなさい。」
「あ、ああ……。」
「まったく……一日だけでそうなら私が死んじゃったらどうするのよ。」
「ご、ごめんごめん。まあ、本当にすぐに行くから。それでは、しばしの別れ。」
「じゃ、行ってきまーす♪早く来なさいよ♪」
そう言うとミリゥは馬車に乗り込んだ。
「……。」
ジェイは黙ったままその場を離れた。
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