通路(Aisle)



 三人は黙って歩いている。
「……。」
 イリサはずっと黙っていた。
「……。」
 マギクもしかめっ面をしながら黙っていた。
「……つっ。」
 タンリズは左腕をおさえながら歩いていた。
「おい、大丈夫か。」
 それを見たマギクが声をかけた。
「だ、大丈夫です。」
「そうか……ところで。」
 マギクは突然声を小さくした。
「ヴィトラって誰だったんだ?」
「……ヴィトラさんはこの国の兵士長です。」
 タンリズも声を小さくした。
「ヴィトラさんは優秀な兵士でした。姫も慕われておりました。育ての親と言ってもいいかもしれません。」
「そうか……。」
「私もヴィトラさんを尊敬していました。なのに何故。」
「……神様ってのはよく残酷な事をするよな。」
 マギクがつぶやいた。
「ったく……。」
 マギクはそれっきり黙ってしまった。
 タンリズは左腕をおさえながら歩いていた。
 イリサは、ずっと黙っていた。

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