王の間(King's room)



「ここか。」
 三人は立派な扉の前に立っていた。
「はい。ここが……お父様の部屋です。」
「中に何があるかわからん。それでも行くんだな?」
「はい。」
「ええ。」
 三人の意思はすでに固まっていた。
「よし、行くぞ!」
 マギクがそう言うと同時に扉を開けた。
「てやっ!」
 タンリズが先頭をきって部屋の中へ入っていった。その後ろからイリサとマギクがついていった。
 が、
「……?」
 三人は周りを見渡している。
「どうなってんだ、これは?」
 部屋には誰もいなかった。
「……?」
 マギクが最初に部屋の中へと入っていった。
「今までみたいに荒れてはいるが……誰かいる気配は無いな……。」
 イリサとタンリズも中に入ってきた。
「本当、誰もいない……。お父様!お父様!」
「誰かいると思ったのに……。」
 部屋の中には動いているものは何も無かった。窓の外の月が不思議に輝いていた。
「……ここまで来たのに……。」
 イリサは座りこんでしまった。
「ちょっと奥の方も探してきます。」
 そう言うとタンリズは壁や玉座の後などを調べ始めた。
「……王の間、か……。」
 マギクはそうつぶやくと部屋の装飾に目をやった。王の間と言うだけあって、装飾は豪華だった。
「ヤケに豪華だよなぁ……。」
 マギクは感心したようにつぶやいている。
「ダメです、何も見つかりません。」
「どうしよう……。」
 イリサはショックを受けているようだった。
「うーん……。」
 マギクは何か考え事をしながら窓辺へと近づいた。
「すっかり夜だな。どのみち、ここからアリムールへ戻るのは明日の朝だな。」
 外には満月が一人、たたずんでいた。
「ふう……ん?」
 マギクは外の景色を見た。
 外には暗闇の町並みと一軒灯りのついた建物と森があった。
「どうしました?」
 タンリズも窓辺に近づいてきた。
「あ、いや……あれ……・。」
 そう言うとマギクは外を指差した。
「あ、あれですか。教会です。」
「そうか……教会へ行くぞ。」
「え?」
 タンリズは戸惑った顔をしている。
「な、何故ですか?」
「……なんで灯りがついてると思う?」
「……夜だから。」
「……おい。あのな、誰か人がいるからに決まってるだろうがっ!」

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