教会(Church)
教会の扉が開いた。入り口にはイリサ、タンリズ、マギクの三人が立っていた。そして教会の中には蝋燭の炎がいくつも揺らめいていた。
「……あれか。」
マギクの視線の先には一人の神父が立っていた。
「……こんなところに何のようだ?」
神父が低い声で三人に聞いていた。
「この国で何があった。」
タンリズが一歩前に出て聞き返した。
「知ってるんだろ、何があったか。ヴァレさんよぉ。」
タンリズが鋭い目で神父を見つめた。
「知り合いか?」
マギクが尋ねた。
「……もともと城の礼拝堂にいた人なの。」
イリサが話し出した。
「でも、賄賂を貰ってたのがバレて解任されたなの。それ以来見なかったんだけど……。」
「お前……何をした?」
タンリズが鋭い目のまま問い詰めている。
「……呪いをかけただけだ。」
「呪い?」
タンリズが少し身構えた。
「……そろそろ……。」
「?」
ヴァレのセリフにマギクは怪訝そうな顔をした。
「そろそろとはな……!?グ……。」
突然タンリズが頭を抱え出した。
「おい、どうした?」
マギクが心配そうに声をかけた。
「どうしたの。大丈夫?」
イリサはタンリズのもとに駆けつけてきた。
「グ……ア……。」
タンリズは頭を抱えながら苦しんでいる。
「どうしたの?大丈夫なの?」
「グ……グァ……。」
タンリズは頭を抱え込みながら震えている。
「……。」
ヴァレは黙って見つめている。
「グ……グアアアアアアアアアッ!」
タンリズの体が突如変化して異形のものになった。そして、イリサの体をは吹っ飛ばされた。
「きゃあぁっ!」
イリサは叫んだ。
「……何故だ……。」
マギクも目の前で起こったことが信じられなくなっていた。
「グアァァァォォゥッ!」
タンリズは叫びながら暴れ始めている。
「噛まれたみたいだな。」
ヴァレが微笑みながら答えた。
「何ぃ!?」
「ええ、噛まれた者はまた化け……ぐぅぁわぁっ!」
突然、ヴァレの首が体と離れた。
「!?」
「グアァァァァァ……。」
タンリズだった化け物がヴァレの首をかき切った。そして、ヴァレの首は教会の外へと飛び出していった。
「……クソッ!」
マギクがタンリズだった化け物に飛びかかった。
「グゥァ……。グァッ!」
タンリズだった化け物がマギクに立ち向かった。しかし、
「てやっ!」
マギクはタンリズだった化け物の目にナイフを突き刺した。
「グゥゥァァァァァァッッッ!!!!!!!」
タンリズだった化け物は苦しみ始めた。
「さあ、姫さん今のうちに!」
マギクはイリサの手を掴んだ。しかし、イリサはその手を離した。
「……どうした?」
マギクがイリサの顔を見た。
「……。」
イリサはそんなマギクを無視して一つの蝋燭へと近づいた。
「どうした、おい!今のうちに逃げないと……。」
マギクは叫んだ。イリサはその声を無視して蝋燭を倒し、床へ落とした。蝋燭の炎は床に燃え広がり、イリサとマギクの間を分け隔ててしまった。
「おい!姫さん!」
マギクの声がよ大きくなった。イリサは黙って自分の右腕を見せた。
「……それは……。」
マギクの視線の先には噛まれた痕のあるイリサの右腕だった。
「……さっき……飛ばされた時に……噛まれたみたい……。だから……私ももうすぐ……。」
「お、おい!」
イリサの顔は笑っていた。そして、涙を流していた。
「マギク、早く逃げて……。」
そうしているうちに炎の勢いは増していった。
「姫さんよぉ!んなこと言ったって……!」
その時、上から炎のついた天井が降ってきた。
「うわぁっ!」
思わずマギクは飛びのいた。そしてそのまま教会の外へと逃げ出した。
「……姫さん!タンリズ!」
教会の外でマギクは叫んでいた。
雨の中、教会は炎に包まれていた。
後日談へ進む
墓場へ戻る
小説目次へ