城門〜ホール(Gate〜Hall)


ドラザァー城


 三人が城門にたどり着くころには日が暮れていた。
「……。」
「……。」
「……。」
 まだ、三人とも黙っていた。
「どうした?」
「……いえ、何も。」
「そうか。」
「……そういう貴方はどうしたんですか?」
「いや、俺、こんな近くで城を見るのって初めてでな……。」
「そうか。」
「こんな城にお前さんたちは住んでんのか。」
「この城は……私たちの知ってる城じゃない。」
「何?」
「何故だかわからないけど……この城は……。」
「……中入るの、どうする?」
「行きましょう。」
 イリサが力強く答えた。
「はい、姫。」
 タンリズもそれに続いた。
 扉は重い音をしながら開いた。
「なんだか廃城みたいになってるな。」
 マギクが言ったように城の中は荒れていた。そして人の気配はなかった。
「……誰か!誰か!出てきなさい!誰か!」
 イリサは思わず叫んだ。しかし声は返ってこなかった。
「……そんな……。」
「なんで誰もいないんでしょうか……。」
 イリサとタンリズの顔が青くなり始めていた。
「さあな。」
 マギクだけが冷静だった。
「奥に進んでみるか?」
「え、ええ。」
「……どうしたんです?」
 タンリズが疑問の声をあげた。
「ん?何がだ?」
「だって……なんでそんなに冷静なんですか?」
「あのな、え〜とタンリズさんよぉ。ここは今何があるかわかったもんじゃないんだぞ?そんなところでパニックになってみろ。ろくな事にならん。」
「あ……。」
「お前も姫を守る立場なんだったら、そこまで考えとけ。」
 そう言うとマギクは歩き出した。
「こっちはどこへ繋がってる?」
「大広間です。」
「行きましょう、タンリズ。」
 三人は大広間へと歩いていった。
「……玄関よりひどいな。」
 大広間で最初に口を開いたのはマギクだった。大広間にある家具や装飾品はすべて散乱していた。
「……何かあったのは間違いない。そして……。」
 マギクは床を見た。床には高貴そうなカーペットが敷いてあり、
「……切りあったか何かなんだろうな。」
 血の痕と思われるシミが広がっていた。
「……。」
 とうとうイリサは何もしゃべらなくなってしまった。
「ここでいったい何が……。」
 タンリズも口が重くなっていった。
「……なあ、どうする?」
 マギクが口を開いた。
「こっから先、何がいるかわからんぞ。命の保証はない。それも行くのか?」
 マギクは冷静に二人に聞いた。
「……。」
 タンリズは黙っている。
イリサは黙ってうなずいた。
「そうか……ただな。」
 マギクはそう言うとゆっくりと入り口と反対側にある扉へと向かっていった。扉のところにたどり着くと、
「扉は開きそうにないぞ。」
 その扉はひん曲がっていた。そのため、扉は開きそうにないのである。
「どうする?」
 マギクはイリサとタンリズに問い掛けた。と、
「ここからなら調理場に繋がってるはずよ。」
 イリサが応えた。
「調理場ですか……たしか北側の扉からでしたね。」
 とタンリズが言うと三人は北側の扉の前へと進んでいった。

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