ドラザァー港(Harbor)



 それから半日後。ドラザァーに着く頃にはすでに夕方になっていた。
「……。」
「……。」
 イリサとタンリズは黙っている。
「……こういう事だ。」
 三人はドラザァーにある港に立っていた。
 ドラザァーの城下町には誰もいなかった。それどころか猫や犬すらいなかった。
「……何で……。」
 さらにドラザァーの上空には明るさのない雲がたちこめていた。
「……誰もいないなんて……。」
 イリサもタンリズも呆然としている。
「帰るか?」
 マギクが不意に声をかけた。
「もうすぐ日が暮れる。日が暮れちまうとここに泊まらなきゃならんぞ。」
「いいえ、帰りません。」
 イリスは意思の強い声で返した。
「そうか。」
「……姫、どうしましょうか?」
「当然、城に行きます。」
「本当に行くのか。」
「ありがとうございます。もう、ここで……。」
「おい。ちょっと待てや。」
 マギクがまた声をかけた。
「俺も行くぞ。」
「えっ!?」
「……ありがとうございます。」
「おいおい、勘違いするな。まだ料金貰ってないぞ。」
「……なるほど。」
「……。」
「で、どっちだ?」
「城はあちらの方角です。」
「そうか。」
 そう言うとマギクは歩き始めた。

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