港町アリムール(Port town)


港町アリムール


「……ん?」
 船乗りのマギクは誰かに揺り起こされた。マギクを昼下がりの太陽が照らしている。
「……?」
 マギクの目の前には一人の若い女性の顔があった。
「……なんだ、姉ちゃん。」
「姉ちゃんとは無礼な!」
 女性とは別の角度から男の声がした。
「良いのよ、タンリズ。」
「しかし……。」
 マギクが男の声のほうを向くとなにやら高貴そうな衣服に身をまとった若い男がいた。
「なんだ、あんたら。」
「あんたらだと!?」
 タンリズと呼ばれた男は明らかに怒っていた。
「タンリズ。……はじめまして、私はイリサと申します。」
「イリサ……ああ、ドラザァーの国の姫と同じ名前だな。」
「私がその姫です。」
「ああ?」
 マギクは怪訝そうな声を出した。
「姫ぇ……?」
「はい。」
「で、その姫さんが何のようだい?」
「お願い、ドラザァーへ船を出して。」
「……なんで俺なんだい?」
 マギクは体を起こした。
「俺はロクな船乗りじゃないぞ。もっとマシな船乗りに頼めば良いじゃないか。」
「断られたんです。」
「……てことは、知ってんだな?」
「はい。」
 イリサの顔が真面目になっていた。
「もう、ドラザァーには船は出ないって。」
「理由は聞いたのか?」
「それが……誰もが口をつぐんでしまって……。」
「我々も不思議に思ってるんですが。」
「そうか……。」
「貴方は御存知なんですか?」
「……あぁ……。」
「教えてください!」
 イリサは突然声が大きくなった。
「……行ってみりゃ解る。ただ、行ってから後悔すんなよ。」

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