その翌日。スポーツ新聞の一面に大きな記事が載った。その内容は、「Mr.life、出版社勤務の女性と熱愛発覚!?」というものであった。

「本居君。この相手というのはまさか……。」
「私です。」
 理香は出勤するなり編集長に呼び出された。
「本居君、こんな事言いたくはないがね、どうせ向こうは君の単なる遊び相手にしか思ってないよ。君だって彼を金持ちだから好きに……。」
「そんなことありませんっ!」
 理香は思わず声を荒げた。
「ならいいが……今度彼に連載頼むように言ってくれんかな?それだけで部数がガッと上がるんだが……。」
「……。」
 理香は無言のまま編集長の前から消えた。

「ちょっと理香、どういうこと?」
「どうしたの、晃美。」
 理香が女子トイレで晃美に捕まった。
「どういうこと?じゃないわよ。あなた、Mr.Lifeと付き合ってんですって?」
「何でそんな事……。」
「社内中の評判よ。気をつけないと質問攻めにされるわ。今日はもう帰りなさい、理香。」
「そんな事……。」
「あっ!理香さん!」
 新たな声に二人が振り向くと、そこには見知らぬ女子社員がいた。
「理香さんどうなの?Mr.Lifeとは?」

 理香は疲れきっていた。女子トイレで出会った女子社員からの質問攻めを上手くかわしたが、興味を持っていたのは彼女だけではなかった。様々な人から質問をされたが、一番露骨なのは芸能誌部門で、セクハラまがいの事まで聞いてきたのだ。理香は晃美の言うとおり、早退した。
 彼女はその足であの喫茶店へと向かった。




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