「ついたのら〜。」
数十分後、敦子と重樹は敦子のマンション前にいた。
「あーここか……ほらいくぞ、ほら。」
「にょお〜。」
敦子の足はふらつきすぎてこけそうなほどだった。もちろん重樹がそれを支えていたのでこけることはなかった。
「はい、はい、そう、そこなにょら。」
二人はある部屋の前で止まった。
「よーし、ここだな。鍵は……。」
「ふひゃい。」
敦子がいつのまにか鍵を取り出していた。
「ああ、ほら早く開けろよ。」
そう重樹が言ったと同時に鍵が金属音をたてながら開いた。
「開いたのら〜。」
「ほら、よっこらせ。」
重樹は敦子を部屋の中に転がした。
「じゃあ、俺帰るからな。」
「はき……。」
敦子は小さな声で何かをささやいた。
「ん?何だ?」
そう言いながら重樹は敦子のそばにしゃがみこんだ。その瞬間。
「うわっ!」
敦子が重樹めがけて吐き出したのである。
「き、き、きたね〜。」
重樹は敦子が吐いた物まみれになった。
「ふざけんなよ、もう。」
重樹は呆然としている。
「……これじゃ帰れない……。」
「とりあえずタオル借りよう。」
重樹は敦子の家の洗面所にいた。
「とりあえず体のは拭くとして問題は服だな。どうしようか……。」
重樹の視界に洗濯機が入った。
「これ……いやダメだ、これじゃ音がうるさくて近所から怒鳴られる。」
結局重樹が選んだ方法は
「はあ、何で他人の家の風呂場で手洗いなんかしてんだろう。」
重樹は下着姿になりながら自分の服を洗っていた。この後、服が乾くまでいったいどんなかっこうになるべきなのかという大問題に気づかないまま洗っていた。
次のページ
前のページ
小説目次へ