そして翌朝。敦子が目を覚ますと部屋の中には誰もいなかった。
「……私昨日どうやって帰ってきたんだっけ……。」
敦子はボンヤリしながら考え出した。
「あ、そっか重樹君がまた送ってくれたんだっけ。」
その時敦子の頭にある一つの記憶がよみがえった。
「まさか……私また重樹君に吐いちゃったんじゃ……。」
そうつぶやくと恐る恐る風呂場へと向かった。
「し・げ・きく〜ん♪いる〜?」
敦子の声は明るいながらも微妙に震えていた。
風呂場からは何の音もしない。
「いないのかな……。」
敦子はこっそりと風呂場の中をのぞきこんだ。中には誰もいなかった。
「いない……。よかった〜また吐いたら何を言われるかたまったものじゃないし……。」
敦子はリビングに戻ってきて座り込んだ。
「ふう……あれ?」
ふと見るとテーブルの上にトーストと目玉焼きがのっている。
「これは……?」
目玉焼きの皿の下にメモがあった。
「……メモ……?」
そのメモは重樹が書いたものだった。
『ちゃんと飯ぐらい食えよ。これ、貸しにしとくからな。』
「……貸し?ああ、これのことね。」
メモを読むと敦子はトーストをほおばりだした。
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