それから12日後ディングはヴィルカナ王国から東の方角にある四聖地の一つである野原の真中にあるオレゴルに辿り着いた。
 ディングはいなくなった魔王セダーを探しに旅立ったが手がかりが全くないので神のご加護を受けようと思い四聖地のうち最も近いオレゴルへと向かったのである。
 ディングは聖堂へと赴いた。聖堂の中央には果物を持った女神の像が配置されている。ここオレゴルには農耕の女神が奉られている。ヴィルカナ王国も毎年この神にお供え物を献上している。そのためか、ヴィルカナ王国には長い歴史の中で一度も飢饉に見まわれた事は無かった。また、このオレゴルという町は魔王を名乗る前のセダーが住んでいた町でもある。ディングは礼拝が終わるとセダーが住んでいた家へと向かう事にした。
 意外な事にセダーが住んでいたという家はすぐに見つかった。少し大きいだけで特にこれといって特徴の無い家であった。その家には現在誰かが住んでいるらしい。しかし、その家は留守であった。仕方なくディングは隣の家をたずねることにした。
「はい?」
 扉を開けたのはふくよかな女性だった。
「あの、すいません隣の家に住んでたセダーっていう人なんですが……。」
「あんた、だれだい?」
「私はディングというヴィルカナ城より派遣されたものなんですが。」
「ああ、そう。セダーって人なら旅に出てるよ。」
「はあ……そうですか。」
「いま、クルブルケイハってとこにいると思うよ。」
「え?」
 ディングは驚いた。
「何で……知ってるんですか。」
「そりゃあんたお隣だもん。知ってたっておかしくないだろう。」
「じゃあ……まだ……セダーさんは……。」
「住んでるに決まってんだろう。あんたセダーさんを訪ねに来たんじゃなかったのかい。」
「あ……そうでしたね。」
「じゃあ、もういいね。」
 そう言うと女性はディングの返事も聞かずに扉を閉めた。


次のページへ
前のページへ
ミニ小説のコーナー目次へ