そして翌朝。
「ふあ……。」
 根田は11時ごろに起きてきた。
「……あれ?」
 根田がリビングに行くと誰も起きた形跡が無かった。
「まだ起きてないのか?」
 根田はそうつぶやいてゆっくりと座った。と、
「ん?なんだこれ?」
 テーブルの上においてあるメモが目に入った。
「……えーと?『今日は二人でデートに行ってきます?』……馬鹿が。」

 そしてその日の夜。
「おう、帰ったか。」
 根田はそう言うとドアのほうを見た。
「今帰りました〜。」
 ドアを開きながら真志が返事をした。
「そっか……どこ行ってたんだ?」
「今日は公園と買い物に。」
「買い物?」
「ええ、真志さんの帽子と私の手袋を。」
「ふーん。」
「……どうしたんですか?置いてかれてすねてるんですか?」
「ちがうわい。……あ、まあいい。」

 そのころ。
「……何?真志らしき男を見つけた?本当か、それは?」
 どこかの立派な部屋の中。50歳ぐらいの痩せ型の男が電話で話している。
「女性と一緒だった?……そうか……。あ、いや。ああ近いうちに迎えに行こう。では。」
 そう言うと男は電話を切った。
「……真志。彼女いたのか……。」
 そう男はつぶやいた。

 そして、その深夜。
「あの〜まだ起きてますか……?」
 真亜美がリビングに入ってきた。
「ん?ああ、まだ起きてるが……どうした?」
「いやその……御相談したい事が。」
「なんだ?」
「やっぱり言わないとダメですかね、私の事。」
「令嬢ってことをか。」
 根田は少しを間をあけた。
「……ま、そりゃ話しておかないとな。」
「……やっぱりそうですよね。」
「とくに今日外に行ったんだから見つかってるかもしれないわけだし。」
「やっぱりそう思います?」
「気づいてたんならやめとけよ。」
「でも……行きたかったし♪」
「お前なあ。」
 根田の声は完全に呆れていた。
「それともう一つ。」
 真亜美の声がまた真剣になった。
「ん?」
「その……お父さんが何を言うかなって。」
「そればっかりはわからん。」
 根田の声も真剣になった。
「それはまあ、そん時にならんと。」

 そのころ。
 どこかの部屋に男が3人いる。
 口ひげを生やした一人はソファーに腰掛けており、2人は立ったまま何かを話している。
「そうか……見つかったか。」
 立っている男2人は黙ってうなずいた。
「わかった。明日……ちょっと話をしに行ってくる。御苦労だった。」
 2人の男は部屋を出ていった。
「ふう。」
 一人残った口ひげの男はため息をついた。
「……なんだかややこしそうだな……。」
 口ひげの男は頭を抱え込んだ。


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