「実は真志が行方不明になってましてね。」
喫茶店の席に二つのコーヒーを挟んで根田と真志の父親、村田良平が座っていた。
「ほほう。」
「その……あなたの家におられると聞いたんですが。」
「……。」
「しかもどうやら女性と一緒にいるとか。」
「……で?私に何を言いたいんですか?」
「……どのような女性なのか……と。」
「……うーん……。」
と、根田が考え始めた時。
「あ、根田さん!」
根田がその声の方を向くと一人の良平と同じぐらいの年の男性が立っていた。
「根田さん探しましたよ。はじめまして私こういう者です。」
その男性は名刺を取り出した。その名刺には「笹月コーポレーション会長 笹月浩太郎」と書いてあった。
「根田さん、さきほど連絡したでしょう?待っててくださいよ。」
「あのね、さ。」
「笹月さん!?」
根田が言うのを遮って良平が声をあげた。
「村田さん!?」
浩太郎も何が起こったかわからない顔をしている。そんな二人の様子をみかねて根田は二人に
「ま、二人とも座ってください。私から説明します。」
「……とまあそんなわけなんです。」
根田はそこまで言うと残っているコーヒーを飲みほした。
良平と浩太郎は黙っている。
「何か御質問は?」
根田が二人を促した。
「あ、いえ。」
「その……本人達はずっと黙ってるつもりなんですかね?」
「さあ……そこまでは直接聞いたわけではないので。」
「しかし。」
良平が話しだした。
「これだったら逃げる必要は無いんですね。」
「ま、そういうことになりますね。」
「だったら早く帰ってくればいいのに……。」
「ま、なかなかタイミングをつかめないんでしょう。なにしろ二人ともあなた方が怒っていると思っているわけですから。」
「根田さん。」
今度は浩太郎が話しだした。
「近いうちにお伺いしてよろしいですか。」
「……そうですね。ただ、前もって連絡はしてください。あいつらをビックリさせてやりたいんで。」
そう言うと根田の顔は妖しく笑った。
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