そして翌朝。根田がリビングに行くとすでに真志も真亜美も起きていた。
「……おはよう。」
「あ、おはようございます。」
「おはようございます。」
二人とも一応挨拶はしたが、
「お前らちょっと緊張してないか?ぎこちないぞ。」
「え、そうですか?」
「そんなことは……ないはずですがね。」
二人からそう言われると根田は思わず笑ってしまった。
「そうか?……で、何時に出かけるんだ?」
「10時ごろに出ようかと。」
「ふーん。」
と、その時。
ぴんぽぉーん。
インターフォンが鳴った。
「お、誰か来たな。」
根田はそう言うと玄関へと向かった。
「?」
「誰なんだろう……。」
と二人がつぶやくと玄関から
「真亜美!真亜美はいるか!」
「お、お父さん!?」
玄関からやって来たのは真亜美の父、笹月浩太郎だった。
「いったい、これはどういうことだ?」
「……お父さん……。」
真亜美は完全に戸惑っていた。
浩太郎は真亜美を睨んでいたが、
「君は誰だね?」
浩太郎は黙っていた真志の方を見た。
「……はじめまして、お義父さん。私は村田真志と言います。」
「ほう?」
「実は娘さんとお付き合いしてるものです。」
「……。」
「お願いします!僕らの仲を許してください!」
「……真志君と言ったね。君は今何をしてるのかね?」
「……大学4年生です。」
「就職先は決まっているのかね?」
「はい。」
「……どこにだね?」
「……村田商事です。」
「ふむ。」
「娘さんと黙って行方をくらませたのは謝ります。お願いです、お義父さん。」
「……そうは言ってもなあ。これは君と娘と私だけの問題じゃない。君の父親のこともあるだろう?」
「……。」
真志は黙ってしまった。
「……真志さん……。」
真亜美も真志を見つめている。
「まあいい。真亜美、見合いに行くぞ。」
「えっ……。」
浩太郎は立ちあがると真亜美の腕を掴んだ。
「まったく……先方さんに急遽連絡を取ったんだ。」
「で、でも。」
「待ってください!」
真志が浩太郎の腕を掴んだ。しかし、
「離せっ!」
浩太郎は真志を振り払った。
「ほら、早く!」
浩太郎と真亜美は出ていってしまった。
「真亜美!」
真志が後から慌てて追って外に出た。すると
「真志。何をやっている。」
「と、父さん……。」
玄関の外には真志の父、良平が立っていた。
「こんなところで何をしている。」
「……父さん、実は好きなひ……。」
「黙れ!」
良平は一喝した。
「行くぞ!」
「……。」
「ほら、ついて来い!」
真志は良平に黙ってついていった。
そして、その様子を陰から見ていた根田が一言
「さ、ハッピーエンドだ。」
と、つぶやいた。
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