見合い会場のホテルにて。
「おい、早く来い!」
 良平は真志を呼んだ。
「……。」
「どうした?」
「あの、父さん。実は……。」
「話なら後で聞く。とにかく今は見合いが先だ。」
 そう言うと良平は黙って歩いていった。そしてその後を真志も黙って歩いていった。と、とつぜん真志が
「!?」
と絶句した。
「ま、真亜美!」
 真志の視線に先には真亜美が座っていた。
「真志さん!?」
 真亜美も叫んだ。
 真志は真亜美の元へと走っていった。
「真亜美、どうしてここに。」
「見合いしろってお父さんが……。」
「真志。」
 真志の後ろから良平の低い声がした。
「と、父さん。僕は今彼女、まあ……。」
「その方が見合い相手の笹月真亜美さんだ。」
「「えっ!?」」
 真志と真亜美は同時に叫んだ。
「お、来たか。遅いぞ村田。」
 真亜美の後から浩太郎が現れた。
「おお、スマンスマン。いやこの道楽息子がなかなかみつからなくてな。」
「それならウチもだ。」
 そう言うと浩太郎と良平は笑い出した。
「??????」
「いったいどういうことなんですか?」
 真志と真亜美はまだ戸惑っていた。
「おお、来たか。」
 真志と真亜美がその声のほうを向くと根田が立っていた。
「根田さん、いったいこれは……。」
「ん?まだわかんないのか?最初の見合いっていうのがお前ら二人の見合いなんだよ。」
「「ええっ!?」」
 真志と真亜美はまた叫んだ。
「だ、だったら言ってくれても……。」
「言うなって頼んだのは誰だ?」
 根田が意地悪そうに笑った。
「……つまり……。」
 真亜美が不思議そうな声を出した。
「私達は逃げる必要が無かったってことですか?」
「ああ。」
「「……なんだ〜」」
 真志と真亜美は完全に脱力している。
「さ、後は若い二人に任せて私らはどこかへ行きますか。」
 根田がそう言うと良平と浩太郎と一緒に場を離れた。
「……そうだったのか……。」
「完全にわからなかった……。」
 真志と真亜美はまだ呆気に取られている。

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