翌朝。エダンダが広場で民衆に叫んでいる。
「さあ、今こそ立ち上がる時だ!あの無能王スハントマを倒すのだ!」
 民衆はそれに呼応した。
「さあ、今こそ!今こそ!ウネクトルを我々の手にするのだ!」
 民衆は城へと乗り込んでいった。

「はじまったわね。頑張ってきて。」
 見張り小屋にはジェイとミリゥだけがいた。
 他の兵士は急遽城に戻ったものもいれば革命軍の先頭に立って行動しているものもいた。
 そしてジェイは
「じゃあ、行ってくる。自分に後悔しないために。」
「うん……行ってらっしゃい。」
 この時、ミリゥの中には恋心が芽生えていた。

 そしてその日の夕方。革命はほぼ終わっていた。スハントマはすでに首と体が別れていた。
「皆さん!ついに!ついに!我らの手で革命を成し遂げたのです!ついに!歴史は動いたのです!」
 エダンダの声は枯れていた。しかしそれでも彼は叫び続けていた。
「皆さん!我々はやりました!我々は勝ったのです!」

「ミリゥ!ただいま。」
 ジェイは見張り小屋に戻ってきた。それをミリゥは笑顔で迎えた。
「おかえり……って何でわかったの?私がここで待ってるって。」
 ミリゥはほほえみを浮かべたまま尋ねた。
「何でだかわかんないんだけど……そんな気がしてたんだ。」
「ふ〜ん。」
「ここにいて大丈夫だったの?」
「うん。ドサクサ紛れに変な事してくるやついたけど、思いっきり殴り倒してやったから。」
「……あのさ。一つ聞いて欲しいんだけど。」
「何?」
 ミリゥは何を言われるか何となくわかっているような気がした。
「ミリゥの事が好き……みたいなんだけど。」
 ジェイの顔は少し照れているようだった。
「剣を持ってさ、戦っている時……ミリゥの顔が浮かんだんだよ。それで……あー好きなんだなってハッキリとしてさ……。」
「ジェイ。」
 ミリゥはジェイの話を途中で止めた。
「なら私の方が先か。」
「え?」
「私ね……最初に酒場で出会った時……助けてくれたじゃない、あの時から……。」
「え!?」
「その時からあなたが私のことを好きになるようにず〜っとそばにいたんだけど、罠に見事にはまったわね。」
「……。」
 ジェイは黙ったまま下を向いている。
「ねえ……怒った?」
「いや。」
 ジェイは明るい声で顔をあげた。
「嬉しいよ、そんなにまでして俺の事好きになってくれて。」
「罠にはまった事怒ってないの?」
「全然。本当に嬉しいよ。」
「うれしい♪」
 そう言うとミリゥはジェイに抱きついた。

 それと同じ頃。ウネクトル城にエダンダは一人で座っていた。
「ついに成功したか。やっと……か。」
 そう言ったエダンダの顔は誰にも見せた事のない、謀略のみが存在する顔だった。

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