「……ん、ああ……。」
 また昔の夢だ。最近よく見るな。いつも夢見が悪いんだが。……まただ。詳しく思いだせん。昔の夢ってのは覚えてるんだが……。
 しかしここは……。
 俺はそう思ってあたりを見まわした。
「……森……。」
 俺はそう呟くと雨が降り出したので雨宿りをするために森のでかい木の下で寝っ転がったのを思い出した。どうやらいつのまにか眠ってしまったらしい。
 あたりはすでに暗かった。俺はとりあえず火を起こすことにした。
「燃えやすそうな枝があると良いんだが……。」
 俺はそう言うと燃えそうな枝を探しに辺りを探してみる事にした。
森の中

「ダメだ。湿ってて使い物にならねえ。」
 俺は一時間ぐらい探してみたが雨が降ってたせいだろうが湿っていて燃えそうな枝は見つからなかった。
 どうするか……。
 俺は心の中でそう呟くと少し歩いてみる事にした。山小屋でもあればめっけものなんだが……。
「……ん。」
 どこからか獣の鳴き声がした。このままだとそいつに襲われるかもしれない。急がなきゃな。

 ……しかし。本当に思いだせん。いったい昔に何があったんだっけ?確か……俺は盗賊団から財宝を奪って……いやもっと前の事だ前の事。えーと……そうだ捕まったんだった。捕まって右目を焼かれたってのまでは思い出せるんだが……。なんで俺は捕まったんだっけ……?……ダメだ。やっぱり思い出せねえ。どうなってんだ。思い出せねえのになんで同じ夢なんべんも見るんだ。
「くそっ。」
 俺はそう叫ぶとそこいらにあった湿った枝を蹴り飛ばした。
「……ん?ありゃなんだ?」
 俺は飛んでいった枝の行方を目で追うと、何かぼんやりとだが建物みたいなものが見えた。木々の奥底にひっそりとたたずんでいるようだった。
「まあいい。助かった。」
 俺はそう呟くと建物の方へと駆け出していった……。
修道院

「……でけえ屋敷だなあ。いったいこりゃなんだ?」
 俺は十分ほど歩くと遠くからはわからなかったがとんでもなくでけえ屋敷のそばにやってきた。俺は何故こんなところにこんなでけえ屋敷があるかわからなかったが、深くは考えない事にした。
 俺は舌なめずりをした。少なくともこんなでけえ屋敷なら何かしら金になるものはあるだろうと思ったからだ。
 とにかく俺はどうにかしてこの屋敷に入ろうと鍵を調べてみることにした。俺はたいていの鍵なら開けられる自信があった。俺はそう思い鍵に手をかけた。すると、
「うわっ。」
 俺は思わず声をあげた。鍵はかかっていなかった。
「……こりゃ空家だな。」
 俺はそう呟くと中に入っていった。すると扉はきしみながら開いた。
「……やたら古いな、これ。」
 俺は改めて扉を見てみた。さっきは暗くてわからなかったが、でかい扉に細かい模様が刻まれている。それだけではない。扉の柄の部分にも何やら細かい模様が刻まれていた。俺は今まで様々な所でいろんな模様を見てきたが、こんなのは初めてだった。
「……こりゃひょっとしたらいい儲けがあるかもしれんな……。」
 俺はそう呟くと建物の中へと入っていった。

 最初暗くてわからなかったが、だんだんと目が慣れてきた。どうやら、ここにはまだ誰か住んでいるらしい。埃一つ落ちていなかった。これならお宝も見事なもんだろう。
 俺は手当たり次第扉を開けてみた。しかし、生活道具しか見つける事は出来なかった。途中地下室も見つけたが特に何も無かったと思う。暗くてよく見えなかったが。
「うーむ……。」
 半分諦めかけた頃だった。ある扉を開けると大きな部屋に出た。
礼拝堂

「ここは……。」
 俺はそう呟いて部屋の中を見まわしてみた暗がりの中にぼんやりと何か浮かんできた。
「……あれは……。」
 それは祭壇だった。どうやらこの部屋は礼拝堂らしい。
「我らが神よ、か。」
 俺は鼻で笑った。神なんて信じる奴等の気が知れねえ。あんなもん単なるイカサマ野郎じゃねえか。本当に神が偉大なら俺はどうしてこんな風になっちまったんだい?そうだよ俺は昔はこんなんじゃなかった……?いかん。まただ。またそっから思い出せねえ。どうなってんだ。まったく。
 そして俺はその部屋を後にしようとした……。

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