この辺の話しなんですけど、昔、そうですね今おじいさんおばあさんの人のおじいさんおばあさんがまだ生まれたばかりの頃ですからもうだいぶ昔の事になりますね。
 この辺はその頃から森だったそうなんですよ。ええ。今よりもっと木々は多かったと思いますよ。
 その頃王位についていたのがとんでもない悪政王だったそうなんです。税金は重いのはもちろん、賄賂を貰ったり、気分次第で人の首をはねたりしていたそうなんです。それにとても女好きだったそうで美人の女は皆お城へ連れ帰って自分のものにしてたそうなんです。だから城下町は男しかいなかったなんて話もあるくらいなんです。まあ、多分冗談だと思いますけどね。
 ですから国民はいつも苦しめれていたんですが、もし文句でも言おうものならすぐに捕まって首を切られていたと思いますよ。
 そんな状態が一年続いたんです。ある日その王が突然森へ狩りに行くと言い出したんです。王様の言う事は絶対ですからね、誰も止めるものはいなかったんです。
 で、狩りをやってたんですけれどもその王様は腕があまり上手じゃなかったんですよ.。その日も獲物は無しだったそうです。王様は自分の腕を棚に上げて「ここは呪われた森だ!今すぐ焼き払え!」と怒鳴ったそうです。でもこの場で火をつけるわけにはいきませんからお城に帰ってから、という事にしたそうです。
 しかし……何故かその日は森から出ることは出来なかったそうなんです。王様は怒りましてね、お供の首をはねる、とすぐに命令したかったんでしょうが、ここで一人になったら困るからその時は言わなかったそうですが、お城に帰った時に首をはねるつもりだったんでしょうね。そのうち霧が出てきましてね、そう、今日のような霧だったそうなんですが。
 そうですね……一時間ほど歩いた頃でしょうか、一軒の小屋が見つかったそうです。その小屋には誰も住んでなかったそうです。
 その日はそこに泊まることにしたそうですが、ただ、夕食の準備は無かったんですね。で、王様はお供に夕食を取ってくるようにと、命令して自分は寝てしまったそうなんです。
 でも……食料はすぐ見つかったんですが……どういうわけか王様のいる小屋には戻れなかったそうです。一晩中探しまわったんですが……。
 お供の人はいつのまにか気を失ってしまったんでしょうか、意識がはっきりするとベッドの上だったそうです。彼は森の外で倒れていたのを近くの村人に助けられたそうです。しかし彼は気が気じゃありません。だって王様を一晩中待たせていたわけですから、王様は首を切るつもりだったという事も知らずに。
 彼は慌てて森の中に探しに行こうとしたんですが、村人に止められたそうです。この森に入らないほうがいい、この森はとても深いので一度迷ったらなかなか抜けだせない。一人で入るなんて自殺行為だ、と言われたそうです。
 彼はそう聞くと城へ急いで帰ったそうです……。

次のページへ
前のページへ